Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme

Aozora Bunko

。

ずっと、石段を下りて、街道筋まで走せ出してみたが、また空しく道場へ立戻ってみると、道場の中で子供の泣く声がします。与八は自分の耳を疑いました。

道場の戸を外から押開いて見ると、提灯をつけ放しにして置いた道場の中のぼんやりした光線の間に、一人の子供がいる。

「郁……郁坊」

「与八さん」

「郁坊か」

「与八さん」

「郁……」

「与八さん」

「郁……」

「与八さん」

「お前、戻って来たのカイ」

「おじさんが……おじさんが連れて来てくれた」

「そのおじさんというのは?」

「知らないおじさんがここまで連れて来てくれて、すぐ帰ってしまったよ」

「そうか」

与八は確実に、郁太郎を抱き上げてしまいました。

七十七

その翌日は、門を閉し、広い屋敷のうちに人のいる気配もなく、訪い来る人もありません。

万事は昨日で終り、あとへ残った与八だけが、この大門を締めて、そうして与八自身も出立してしまったものと、村人は心得ているのでしょう。

けれども、与八は残っているのです。郁太郎もまた、この家に留まっているのです。

ただ、表の門を締めきって、二人ともほとんど、物の音も揚げないから、それで人が本当の留守と思っているのでしょう。