Japanische Klassiker mit Furigana
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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Lesen Sie 浅草風土記 (あさくさふどき) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.294 Zeichen · 318 Bildschirme
すこし離れて、出はずれの、角に、鯛煎餅という名代の煎餅屋があった。――そこを曲ると眼のまえに、柿いろや、水いろの、水野好美さんへ、小島文衛さんへ、境若狭君へ、そうした常盤座の役者たちへ来た幟が立っていた。
それがどうだろう。
左官屋のあとが鮨屋になった。貸本屋のあとも鮨屋になった。そうして待合のあとは小料理屋になった。
以下、縫箔屋、仕立屋、道具屋、駄菓子屋、炭屋、米屋。――そのおのおのが鮨屋になり、汁粉屋になり、小料理屋になり、支那料理屋になった。――夜、暖簾のかげ、硝子戸のうしろに、あかるい、熟れたような燈火を忍ばせる店舗ばかりが並んだ。
むかしながらに残っているのは、和倉と、出はずれに近い床屋とがあるばかりである。――嘗て、わたしが、田原町に住んでいた時分、散歩に出ては、いつもその床屋のまえを通った。そうして、その、見世の隅に、五十がらみの支那人の耳掃除をしているのをつねに見た。
なぜか、わたしに、その支那人のことが忘れられなかった。四五年して、「雪」という戯曲を書いたとき、わたしはその茶の服を着たすがたを舞台のうえにみ出したいと思った。