Japanische Klassiker mit Furigana
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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Lesen Sie 浅草風土記 (あさくさふどき) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.294 Zeichen · 318 Bildschirme
七
七
……が、わたしは失望しなくってもよかった。入谷と山の宿とをつなぐ新開道路の、自転車、自動車、貨物自動車のはげしい行きかい。――その瀬戸の荒い波の中を乗越したとき、急にわたしは、いままでのあかるい日のいろの代りにしずかな月のひかりを感じた。しずかに可嘆しい夕月の匂を感じた……
とは何か?
古着屋である、堅光地蔵のほとりの古着屋である、そこに四五けんかたまって並んだ「確実正札附」の古着屋である。
その店さきに下った双子縞、唐桟柄、御召縮緬。――黒八のいろのさえた半纏、むきみや、丹前。――帯の独鈷、献上、平ぐけ、印半纏、長繻絆、――その長繻絆の燃え立つようないろにまじった刺っ子、刺っ子半纏……
その刺っ子である、刺っ子半纏である。――その刺っ子半纏の紺のいろの褪せである、その背を抜いた朱のいろの古びである。そのまた朱のいろをつぶした紺のいろの――その紺の糸のいろの情の強さである……
はッきりそこに「三の酉」のあくる日をわたしは感じた。すでに来すぎている「冬」を感じた。浅草という土地を支配する「吉原」のいのちを感じた。――そうしてしずかに可嘆しい夕月の匂を感じた。