Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
六
六
「土曜日の晩は、ママの旦那が来るんだよ。だから……」
京吉はまるで他人事のような口調で答えた。
「ママ……って、あんたの……お母さん……?」
と、陽子がきいた。京吉は急に笑い出した。
玄関のボーイが振り向いた。
その視線を感じて、陽子ははじめて、立ち話の長さに気がつき、
「ハバハバ行きましょう」
と、小声で誘って、ドレスの裾を持った。
「おれ、お袋なんかねえよ」
と、京吉もロビイを横切って、
「――おれのいる家の女のことだよ。みんな、ママ、ママと呼んでるから……」
おれもそう呼ぶんだ――というその言葉は、しかし、半分は聴きとれなかった。
バンドの騒音が、ホールの入口に近づいた二人の耳に、いきなりかぶさって来たのである。
「ママお二号さんなの……?」
「うん。旦那は土曜だけ来るんだ。おれ居候みたいだろう。だから、旦那に見つからない方がいいんだ」
京吉は聴えるように、ぐっと体を近づけていたが、ホールの中へはいると、陽子は何思ったのか、いきなり京吉からはなれて、
「あんた、じゃ、ママの燕……? いやねえ」
不潔だわ――と、顔をそむけた拍子に、ホールの奥の朱塗りの階段が、いつもより毒々しい色で眼に来た。