Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
四
「…………」
三条通りの角をカーブしたジープが、みるみる河原町の六角通り方に小さくなって行くのを見送っていると、
「もう、渡れる。兄ちゃん、さア渡ろう」
京吉の手をひっぱるようにして横切った娘は、
「兄ちゃん、あたいと歩くのンいや……?」
四
二言目には兄ちゃん兄ちゃんとうるさいくらい、繰りかえすのが、娘にはたのしい癖のようだった。
しかし、それがふと哀れじみて聴えたのは、この娘の孤独のせいだろうか。浮浪し、流転して来た一年余りの歳月の間に覚えた悲しい人恋いの歌のリフレエンのようだった。
すくなくとも、京吉の耳には悲しい響きに聴えた。孤独と放浪の淀の水車のようなリズムが人一倍判る京吉だった。だから、
「兄ちゃん、あたいと一緒に歩くのンいや……?」
と言いながら、そっと覗きこんで顔色をうかがう十二歳の娘の気持は、三十女が何気なくすり寄せて来る肩の柔い体温の意味よりも、もっと身近に読み取れて、その言葉の何か故郷を持たぬ訛りにも、しびれるようななつかしさを感じた。
しかし、それにしても、この娘の熱っぽい眼は一体何であろう。
「おれと一緒に歩くと、誘拐されるぞ!」