Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
四
「さア……」
「ここへは……?」
「はじめてでしょう。どうせ、どっかの玄人じゃないかしら」
「靴とりに来えへんのか」
「まだでしょう……?」
「乗竹は……? まだ居とるのンか」
「侯爵……? 帰ったわ、今……」
「ふーん」
「あなたは、これからどうなさる……?」
「大阪へ帰る」
「東京へ行くひまなんか……?」
「まア、ないな」
そう言いながら、章三は、こいつ乗竹を誘って行くつもりやなと、キラッと光る眼で貴子を見た。そして、新聞をひろげると、
「売邸、某侯爵邸、東京近郊……」
そんな広告が眼にとまった。
四
章三はゾッとするような凄い笑いをうかべて、
「こりゃ面白くなって来よったぞ!」
と、その新聞広告を見ていた。
「某侯爵邸と書いとるが、こらてっきり乗竹侯爵のことにちがいない」
章三は偶然というものを信じていた。自分の事業家としての才能や、頭脳回転の速度や、闘志は無論信じていたが、それ以上に偶然を信じていたのだ。
爪楊枝けずり職人の家に生れたのは、偶然だ。そして、この偶然がやがてかずかずの偶然を呼んで、三十五歳の無名の青年実業家が、二十一年度の個人所得番付では、古い財閥の当主の上位を占めるという大きな偶然を作りだしたのだと、彼は思っていた。