Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
子供の麦笛。うなりをうって吹く二百十日の風。音なくして声ある春の雨。音なく声なき雪の緘黙。単調な雷の様で聞く耳に嬉しい籾摺りの響。凱旋の爆竹を聞く様な麦うちの響。秋祭りの笛太鼓。月夜の若い者の歌。子供の喜ぶ飴屋の笛。降るかと思うと忽ち止む時雨のさゝやき。東京の午砲につゞいて横浜の午砲。湿った日の電車汽車の響。稀に聞く工場の汽笛。夜は北から響く烏山の水車。隣家で井汲む音。向うの街道を通る行軍兵士の靴音や砲車の響。小学校の唱歌。一丁はなれた隣家の柱時計が聞こゆる日もある。一番好いのは、春四月の末、隣の若葉した雑木林に朝日が射す時、ぽたり……ぽたりと若葉を辷る露の滴りを聴くのである。
夏秋の虫の音の外に、一番嬉しいのは寺の鐘。真言宗の安穏寺。其れはずッと西南へ寄って、寺は見えぬが、鐘の音は聞こえる。東覚院、これも真言宗、つい向うの廻沢にあって、寺は見えぬが、鐘の音は一番近い。尤も東にあるのが船橋の宝性寺、日蓮宗で、其草葺の屋根と大きな目じるしの橡の木は、小さく彼の縁から指さゝれる。
大木は地の栄である。彼の周囲に千年の古木は無い。甲州の山鏈を突破する二本松と、豪農の杉の森の外、木らしい木は、北の方三丁ばかり畑を隔てゝ欅の杜の大欅が亭々と天を摩して聳えて居る。