Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme

Aozora Bunko

そうして前後の人を見渡したけれども、ついに自分の叫びかけている人の姿が、どこにも見えないことを知ると、

「与八さん、与八さん」

覚束ない足どりで、西に向って――つまり、自分たちが立ち出て来た方へ向って走りはじめます。

「郁太郎様、どこへいらっしゃる」

登を抱いていた乳母がかけつけました。それを振りもぎって走る郁太郎。馬上にいたお松も、馬から下りないわけにはゆきませんでした。

「郁太郎様――与八さんはあとから来ますよ」

「あとからではいけない」

お松のなだめてとめるのさえも、肯かないこの時の郁太郎の挙動は、たしかに、平常と違っていることを認めます。

「与八さんは、あとから草鞋をどっさり、拵えて持って来ますよ、だから、わたしたちは一足先へ出かけているのです」

「いや、いや、与八さんと一緒でなくては行かない」

「そんな、やんちゃを言うものではありません」

「いや、いや、与八さんと一緒でなくては……」

この時の郁太郎は、激流を抜手を切って溯るような勢いで、誰がなんと言ってもかまわず、その遮る手を振り払って、西へ向って、もと来た方へ一人で馳せ戻ろうと、あがいているのです。