Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme

Aozora Bunko

「先生、火事でございます、早くお仕度なさいまし」

言われるまでもなく、この時、竜之助はもう心得て、身のまわりのものを掻き寄せていたところでした。

「お雪ちゃん、気をつけるといい、火事の時は、明るい方へ逃げないで、暗い方へ逃げるものです」

「先生、早くなさいまし」

お雪ちゃんは、竜之助の手を取って引立てようとしたが、人を急き立てる自分こそかえって、あわてていて、ねまき一つのまんまで騒いでいるのに、竜之助は、身のまわりのもの、少なくとも大小、懐中物だけは、抜かりなく用心した上に、頭巾を手に取り上げています。

「さあ、降りましょう、ああ、いけません、こちらは明るい、この裏梯子から」

「ああ、先生、わたしは、もう一ぺん自分の座敷へ戻らねばなりません」

「それは危ない」

「でも……」

「命には代えられません」

その裏梯子を下りる時には、お雪ちゃんが竜之助を導くのではなく、むしろ、竜之助がお雪ちゃんを抱えて、静かに下りて行くのを見ましたが、火は、煙は、遠慮なくその後を追いかけて、姿そのものを捲き込んでしまいました。

こうして二人は、ほんとうに身を以て、裏梯子から、すぐ家の欄の下の桟橋に立って、河原を走ることになりました。