Japanische Klassiker mit Furigana
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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Lesen Sie 浅草風土記 (あさくさふどき) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.294 Zeichen · 318 Bildschirme
と書いた掲示が無心にぶらさがっている。
まえのほうは一ぱいだ。われわれの立った自由席はがらがらだがまえの椅子場はぎッしりだ。
早くしろい。
早くあけろやい。
たのんまッせ、もし。
……ばたばたと拍手。……おもい出したようにである。……暗いなかに麦藁帽子の波がうごく。
八幡町の小林さァん……
木戸まで急用である。
松倉町の新井さァん……
そうした無表情な声がそのなかをぬってながれる。
……麦藁帽子の波は白くうごく。
大和屋三姉妹、と大きく書いた掲示が上手の壁にまたぶら下っている。
父危篤の報に接し帰郷いたしました。休演中は御用捨願います。
……くわしくいうと、大和屋とだけ大きく、その下に三姉妹とやや小さく横に、父危篤の報に接し以下の文句は、その下に、縦に小さく三行に分けて書いてある。
下手の同じ位置にも何か書いたものがさがっている。が、それはよめない。
……暑い。
が、しずかだ。――しずんでいる。――もう一つざわつかない。
天井に煽風機が夢中でまわっている。
と、柝の音。
やがてするすると幕はあがった。浅黄壁、葭戸、庭遠見、そうして真ん中の二重のうえに、お下げの、真っ赤な帯上げを胸高にもりあがらせた少女がすわっている。