Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

Lesen Sie 浅草風土記 (あさくさふどき) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.294 Zeichen · 318 Bildschirme

Aozora Bunko

忘れもしない、去年、その日からちょうど一ト月たった四月の九日に、はじめてわたくしは、その焼けあとに立った。……仁王門もない、五重の塔もない、輪蔵もない、何もない……そして“本尊御安泰”としるした立札の、申訳ばかりにたったガランとした中を佇んだわたくしの胸にどんな思いがわいたか?……

――戯談だろう。……そんな手にはのらないよ。……しらばッくれるのもいい加減にしてくれ……

と、たとえば、そういって相手の肩を叩いたとせよ。

――こまったナ、そう種を知られちゃァ……

と、相手は、狡猾なわらいをうかべつつ、仁王門、五重の塔、十八間四面の本堂。……そうしたものの何一つ欠けるところのない、いままで通りの、完全な、うつくしい浅草寺境内をわたくしのまえにもって来て、しかも、きわめて容易に、その廃墟と入れかえてくれるにちがいない、といった気がわたくしの胸を一ぱいにした。……それほど、わたくしに、焼亡したその現実のすがたが信じられなかったのだ。

そのあと、わたくしは、嘗ての日の“富士横町”をあるいた。折から、しとしと雨のふる午前で……春雨というべくは、あまりにも陰気な降り方だった……わたくしは夢の中をたどるおもいだった……み渡すかぎりの蒼白い焼野原の中に……不思議に焼トタンの赤ッちゃけた感じがわたくしに来なかった……人の