Japanische Klassiker mit Furigana
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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Lesen Sie 浅草風土記 (あさくさふどき) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.294 Zeichen · 318 Bildschirme
――わたしたちは……すくなくもわたしは、その瞬間、電車をわすれ、自動車を忘れた……今を人の出さかりと、ただもうわめき立てる商人達の声をいっそ夢みごこちにわたしは聞いたのである。
が、そうしたわたしの心もちはすぐ冷え返った。「検査場の門」から吉原の廓内へ入ったことによって惨めに冷え返った。なぜならそこに「天柱くだけ地維かくるかと思はるゝ笑ひ声のどよめき」も感じられなければ「さつさ押せ/\と猪牙がゝつた言葉に人波を分くる群」もみ出されなかったからである。「河岸の小店の百囀りより、優にうづ高き大籬の楼上まで、絃歌の声のさま/″\に沸き来るやうな面白さ」の、そうした光景を廓内のどこにもわたしは求める事が出来なかったからである。――たった一けん、大門に近いとある引手茶屋の店さき、閉めた障子の硝子越しに一人のお酌の大鼓を火鉢の上にかざしているのをみた以外には、三味線の音、太鼓の音一つわたしは聞かなかった。座敷へいそぐ芸妓の姿一つわたしはみなかった。
これよりさき「検査場の門」へ入ろうとする際で道は二つにわかれる。一つは、「吉原へ」である、一つは、「公園へ」である。