Japanische Klassiker mit Furigana
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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Lesen Sie 浅草風土記 (あさくさふどき) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.294 Zeichen · 318 Bildschirme
銀行といえば、手近に、並木通りの浅草銀行(後に豊国銀行)の古く存在するばかりだったのである。――「大風呂」のすでに失われた今日「大風呂横町」の名のいつかは昔がたりになるであろうとともに、「松田の横町」の「松喜の横町」と呼びかえられるであろう日のそう遠くないことを、カラリとした感じの、いち早く区画整理のすんだ、いままでより道幅の遥に広くなった往来のうえに決定的にそうわたしは感じた。――いままでの「松田の横町」は外の三つの横町のどこよりも暗く陰鬱だった。――「松喜」とは「いろは」のあとに出来たこれも大きな牛肉屋である。――そこに、ちんやと、すべてに於て両々相対している。……
その四つのそれぞれの横町について、これ以上巨密なふでを費すことをわたしはしないだろう。なぜならそれはいたずらにただわたしの感懐を満足させるにすぎまいから。ただ、わたしに、それらのほうぼうの横町で聞いた「はさみ、庖丁、かみそりとぎ」だの、「朝顔の苗、夕顔の苗」だの、定斎屋の鐶の音だの、飴屋のチャルメラだの、かんかちだんごの杵の音だの、そうしたいろいろの物音が、幾年月を経たいまのわたしの耳の底にはッきりなお響いている――それらの横町を思うとき、わたしの心はしぐれのような暗い雨にいつもぬれるのである……