Japanische Klassiker mit Furigana
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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
Lesen Sie 浅草風土記 (あさくさふどき) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.294 Zeichen · 318 Bildschirme
――疲れてもう腕がいうことをきかなくなってもなお、強情にわたしたちは止めなかった。――店のほうから、面白がって、料理場のものだの女中たちだのが代る代る見物に来るので、一層わたしたちは昂奮した。
そのうち日が暮れて来た。いくら口惜しがっても見当がつかなくなった。見物もいつとはなし退散した。――わたしは、今度をまた約束して残念ながら着物を着た。
外へ出て、吉野橋まではみんな一しょだったが、それをわたると一人わかれ二人わかれ、しまいにとうとうわたし一人になった。――わたしのうちの見当へ帰るものは誰もいなかったのである。――わたしは、猿若町を馬道の通りへ出て、そこの、まさるやという古い菓子屋で切山椒を買った。――その時分、わたしは、どんな菓子より切山椒が一番好きだった。
後生大事にその袋をふところに入れて、あかりのいろのすでに濃くなったみちを、ひたすらわたしはいそいであるいた。披官稲荷の露地を抜けて、三社さまのわきまで来たとき、ばらばらと暗い空から、急に冷めたいものがふって来た。――雨かと思ったらみぞれだった。
うちへつくと、すぐ、買って来たその切山椒をむさぼるようにわたしは食べた。