Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Lisez 三国志(七) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 371 916 caractères · 744 écrans
張飛は、そこに野営して、翌日も早天から攻めにかかった。すると矢倉の上に、老雄厳顔が初めて姿をあらわして、
「先頃、使いの口上で、満城を血にせんといったのは、さては、寄手の血漿をもって彩ることでありしか。いや見事見事。ご苦労ご苦労」と、からかった。
張飛の顔は朱漆を塗ったように燃えた。その虎髯の中から大きく口をあいて、
「よしっ。汝を生捕って、汝の肉を啖わずにはおかんぞ」
云った途端である。
厳顔の引きしぼった強弓の弦音が朝の大気をゆすぶって、ぴゅっと、一矢を送ってきた。張飛が、
「あっ」
と、馬のたてがみへ、身を伏せたので、矢は彼の甲の脳天にはね返った。
幸いにも、鉢金は射抜けなかったが、じいんと烈しい金属的な衝撃が脳髄から鼻ばしらを通って、眼から火となって飛びだしたような気がした。
さすがの張飛も、ふらふらと眩いを覚えて、
「きょうはいかん」と、匆々、後陣へかくれてしまった。
「なるほど、蜀には相当な者がいる」
張飛が敵に感心したことはめずらしい。しかし、敵を尊敬することによって、彼も、ただ力ずくな攻城がいかに労して効の少ないものかを教えられた。
城の一方にかなり高い丘陵がある。