Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Lisez 三国志(七) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 371 916 caractères · 744 écrans
二
われを忘れて、孔明は帝の龍床にすがり、面を寄せて、涙のうちに云った。
「何か仰せ遺す詔がありましたら、どうぞおつつみなくお命じ下さい。孔明、不才ですが、余命のあらんかぎりは、胆にお言葉を銘じて、必ずお心残りはないように仕りましょう」
「よくいうてくれた。玄徳はいまを以て世を去るであろう。わが為すことは尽きた。ただ丞相の誠忠を信じて、大事の一言を託しおけば、もう何らの気がかりもない」
「……一言の大事と仰せ遊ばすのは」
「丞相よ。人将に死なんとするやその言よしという。朕の言葉に、いたずらに謙譲であってはならぬぞ。……君の才は、曹丕に十倍する。また孫権ごときは比肩もできない。……故によく蜀を安んじ、わが基業をいよいよ不壊となすであろう。ただ太子劉禅は、まだ幼年なので、将来は分らない。もし劉禅がよく帝たるの天質をそなえているものならば、御身が輔佐してくれればまことに歓ばしい。しかし、彼不才にして、帝王の器でない時は、丞相、君みずから蜀の帝となって、万民を治めよ……」
孔明は拝泣して、手足の措くところも知らなかった。何たる英断、何たる悲壮な遺詔であろう。太子が不才ならば、汝が立って、帝業を完うせよというのである。