Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Lisez 三国志(七) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 371 916 caractères · 744 écrans
二
こんなことになるなら、荊州の民に頼まれた手紙や品物や、また言伝なども兵に聞かすのではなかったものを」
使者に行った将は、ひそかに悔いたが、もう間にあわない。残っている兵の顔にも、慕郷や未練のかげが濃く、戦意はまったくあがらなかった。
「去る者は去れ。一人になっても我は荊州に入る」
関羽は断乎として進んだ。
けれど途中に、呉の蒋欽、周泰の二将が、嶮路を扼して待っていた。河辺にたたかい、野に喚きあい、闇夜の山にまた吠え合った。――しかもそこではさらに、呉の徐盛が、雷鼓して伏兵を起し、山上山下から襲ってきた。
「百万の敵も何かは」
日頃と変らない沈着の中に、関羽の武勇は疲れを知らなかった。けれど、山峡のあいだに、皎々として半月の冴える頃、こだまする人々の声を聞いては、さすがの彼も戦う力を失った。
親は子を呼び、子は親を呼ぶ。或いは良人の名を、或いは妻の名を、互いに呼び交わす声が悲風の中に絶え絶え聞える。そしてここかしこ、関羽の兵は、白旗を振って、荊州の方へ馳けこんでゆく。
「ああ。これも呂蒙の計か」
関羽は憮然として、月に竦み立っていた。
二
飛び去る鳥の群れは呼べども返らない。