Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(七)
吉川 英治
Lisez 三国志(七) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 371 916 caractères · 744 écrans
「こよいの用心布令は鶏肋との仰せである。鶏肋鶏肋」
と、布令廻った。
諸将は怪しみ合った。鶏肋とはいったいなんのことか? 誰にも解けない。諸人は疑義まちまち、当惑するばかりだった。ときに行軍主簿の楊修だけは、部下をあつめて、
「都へ帰る用意をせい。荷駄行装をととのえて、お引揚げの命を待て」と、急にいいつけた。
夏侯惇はおどろいた。自分が布令たことであるが、実は自分にも分っていないので、早速、楊修に向って訊いた。
「どういうわけで、貴公の隊ではにわかに引揚げの用意にかかられたか」
「されば、鶏肋というお布令を案じてのことでござる。それ鶏の肋は、これを食らわんとするも肉なく、これを捨てんとするも捨て難き味あり、いま直面している戦は、あたかも肉なき鶏の肋を口にねぶるに似たりとの思し召かと拝察いたす。それにお気づきあるからには、わが魏王も益なき苦戦は捨てるに如かずと、はやご決心のついたものと存ずる」
「なるほど」
夏侯惇は感服して、おそらく魏王の肺腑を見ぬいた言であろうと、ひそかにその旨をまた諸将へ告げた。
三
その夜も曹操は、心中の煩乱に寝もやられず、深更、みずから銀斧を引っさげて、陣々の要害を見廻っていた。