Classici giapponesi con furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Leggi 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 350.912 caratteri · 702 schermate
(こんど曳き出される時には生命がない)
又八は毎晩、夢うつつに、あぶら汗をかいた。冥途の夢を幾度も見た。冥途には、槐の木ばかり生えていた。
或る夜、彼はまた、母親の夢をありありみた。おばばは、今の自分の境遇をあわれともいってくれず、飼蚕笊をぶつけて何か怒りわめいている。笊の中にいっぱいあった白い繭を頭から浴びて、又八は逃げまわった。するとその繭のお化けのように白い髪をさかだてたおばばが、どこまでもどこまでも追いかけてくる。夢の中の又八はびっしょり汗をかいて崖から飛びおりたが――体はいつまでも下へつかないで奈落の闇にふわふわしていた。
――ごめんなさいっ。
――おっ母さん。
子どものような悲鳴をあげたと思うと、彼は眼をさましていたのである。眼がさめるとまた、かえって夢よりも切実に恐い現身に回って、惻々と責め虐まれた。
(そうだ……)
又八はこの恐怖から自分を救うために、ひとつの冒険へ奮って起った。それは、槐の木がまだ無事でいるか、移植されたか、見届けてくることだった。
江戸城の要害は、小屋そのものにもあるわけではない。江戸城の外へ出ることはとてもできないが、この小屋から槐の木の側まで行ってみることは、さして困難ではあるまいと思いついたのだ。