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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
「おやおや」と代官松は苦く笑ったが、すぐに応ずることにした。
「それは申すまでもございませんよ。お前さんの縹緻と来た日には、唐天竺にもないということで」
「でも皆様はおっしゃいます」またもやお粂は上手に出た。「赤い手甲に赤い脚絆に、長い振り袖に鬱金の襷姿のほうが縹緻よりも、もっともっと結構だと」
「いやはやまたもやはぐらかされたぞ。一筋縄ではいかない女だ」代官松はいやになったが、しかし応ずることにした。「いやお前さんの扮装と来ては、豪勢な評判でございますよ」
――今度はなんというだろうかな? 代官松はヒヤヒヤしながら、お粂の返辞を待ち設けた。
「煙術より縹緻より扮装より、もっともっともっと素晴らしいものを持っていると、皆様はおっしゃりはしませんか、あなた様ばかりはおっしゃいますはずで」
「え?」と代官松は首をひねった。
「そうでございましょうかな? そうでございましょうかな?」
「両国でお逢いしましたねえ」
「え、両国で? さあいつごろ?」
「一月ほど前の真昼間に」
「はてね、どうも覚えがない」
――とお粂は蓮っ葉に笑ったが、
「つくりや顔を変えていたのでお気がつかなかったのでございましょうよ。