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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

注進に走る小次郎

友吉はその一人へ顔を向けたが、「北条の殿様へ親分のほうから、申し上げてあるということだ」

「焼き討ちを今夜と定めたのは、どういうところから来ているのだろう?」

「それだってなんでもありゃアしない」いいながら友吉は四方を見たが、「おい、そろそろ佐久間町だぜ」

そこは佐久間町の一丁目であった。

注進に走る小次郎

友吉をはじめとして四人の者はこうして佐久間町の一丁目まで来たが、不思議な老人の籠もっているという、佐久間町二丁目の屋敷へまでは、少しく距離があったのでなおもヒソヒソ話しながら、ひそやかに先へ進んで行った。

月が四人を照らしている。四人の影が地へ曳いて見える。せわしそうに二、三人の往来の人が、四人とすれ違って歩いて行ったが、その後は一時人通りが絶えた。ここは片側の町である。一方の側には町家が並んで、家々は屋根を月光にさらして、灰白色にぼかしていたが反対の側には川があって、水が音も立てずに流れていた。すなわち神田川の流れである。四人は先へと進んで行く。

「なにの、それはこういうわけだ」友吉は含んだ笑い声で、一度に三人へ聞かせるようにいった。「第一に紋也の後ろ楯が、正親町様だとわかったので、それで遠慮も会釈もないやっつけることに定めたのさ。