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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
露路を縫って
で背後を振り返って見た。と、前方の味方の勢が、崩れ立ったのを見たからであろう、背後から寄せて来た敵の勢も、こちらへ寄せて来ようとはせずに、一つ所のようすを見守っていた。
「うむ、この隙にこの露路を出よう」でお粂へ声をかけた。
「ご覧の通りに二人の門弟が、前方から助けにまいりました。我らも切り込んではさみ討ちとし、ともかくも露路からのがれましょう。背後は大丈夫でござりますよ。寄せて来る気づかいはござりませぬ。いざ!」
というと紋也は太刀をかざし、お粂を背後へ従えると疾風のように走り出した。が、しかし見よ、その瞬間に、すさまじい音が轟いて露路が火の海に一変したことを! 右手に並んでいた家並みが、焼けて崩れて落ちたからであった。
露路を縫って
焼け落ちた家並みが露路をおおうて、焔々として焔を上げて、黒煙と火の粉とを八方へ吹いて、反対側の家並みをさえ、まもなく同じように焼き落とそうとしている。その露路の中で戦っていた紋也やお粂や二人の門弟や、代官松の乾児たちは、どういう運命になったことであろうか。焼け落ちた家並みの下敷きとなったら、潰されたあげくに焼き殺されなければならない。