轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
子守唄
と、誰ともなく呼ぶ声が聞こえて来た。――そこで紋也の意識は絶えた。
ずっと下火にはなったけれども、火事の光は空に薄赤く、地には月光が蒼澄んでいた。戦いの後の寂しさよ、佐久間町入り口の往来には、人の子一人いなかった。踏み荒らされた地面の土は、ところどころ穴をなしていて、血汐のにじんだような所もあった。片側町の家々では、太刀音や悲鳴や閧の声に、怯やかされたか、雨戸をあけて外を見ようとする者さえなかった。と、その時静寂を破って、謡う声が横丁から聞こえて来た。
※(歌記号、1-3-28)柳の下のお稚子様は、朝日に向こうてお色が黒い……
子守唄
※(歌記号、1-3-28)お色が黒くば笠を召せ、笠も笠、いつきようとがり笠、おそり笠、じょに吹く笛がふもとにきこゆる……
謡いつづけて横丁の口から、佐久間町の通りへ現われて来たのは、お狂言師の泉嘉門であった。不平を酒でまぎらわしはじめたのは、久しい前からのことであったが、このごろではいっそう烈しくなって、家で連日飲むばかりでなく、外へ出ては暴飲をし、往来へ倒れては夜を明かし、居酒屋で眠っては帰宅しようともしない。今日も朝から酒を飲んで、昼ごろになって家を出て、どこでこれほどにも飲んだのであろうか、足もとが定まらないというよりも、身体全体が定まらないように、手で空を泳ぐような