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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
元始の人間の血液が、ある特質の人間だけに間けつ的に遺伝って、夜になるごとに、その人間は、その元始の人間の、生活を如実にするという――これについては米国の作家ジャック・ロンドンなども書いている。
思うに満知姫がそれなのであろう。その不幸な人間なのであろう。それにしても満知姫が物をいうごとに、かおって来た芳香は何なのであろう。
愛欲生活に充たされていた元始の人間はおのずからに催情的の芳香を、呼吸の中に持っていたと、碩学エロイスが説いている。その芳香を夜の間だけ、満知姫も持っていたのであろう。それにしても満知姫の犠牲になって、絶息するまでに衰弱をしたいろいろの人間をこの空家の、塀の切り戸から運び去った、武士たちはそもそも何者なのであろう。やはり満知姫の家臣であったと解釈すべきが至当であろう。
老女や若い美男の武士に、緑色の衣裳をなぜ着せたか? きわめて容易に説明できる。姫が元始の森林の、縁の色を愛したからである。老女に醜女をなぜ選んだか? 美しさを引き立てようためだったのだ。満知姫自身の美しさを。
満知姫の犠牲になろうとした山県小次郎はどうしたか?
四辺に姿が見えなかった。