轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
八
康子は、この砂丘が海岸まで続いているものとは察したけれども、それが、どんな広い地域を占めているのかは想像がつかなかつた。おそらく、あとまだ十キロは歩かなければ目的の場所へは行き着くまいという計算である。そう考えると、やつぱり、急いで道を迷うことが一番おそろしいのである。
ゆつくり弁当をつかうことにした。
モトムは、もう顔をしかめていた。
と、その頃から、急に冷い風が吹きだした。すると、海の方角にあたつて、白煙のようなものが立ちのぼり、その白煙の巨大な幕が、しだいに陸をめがけてはいあがつてくる。
「来た、来た……」
と、彼女は、つい口にだして言つた。そして、無意識に顔を伏せ、モトムのからだを自分の胸の下へ抱きよせて、しばらく、息を殺していた。モトムの手は彼女の肩のあたりでふるえているようであつたが、彼女は、自分のからだがふるえているのかもしれぬと思い、
「こわいことなんかないのよ。ほら、きのうだつて、この通りだつたじやないの」
しかし、きのうの様子とは、まるで違つていた。第一に、それは襲いかゝるような勢いで彼女たちを取りかこみ、たちまち、動きのとれぬものにした。