轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

「叩き斬ってやろう! 叩き斬ってやろう!」で刀の柄を握った。と、その時駕籠の中で、ゆるゆると持ち上がる白い物があった。女が腕を上げたのである。と、コトリと音がした。見れば駕籠の扉がとざされている。女が内からとざしたのであろう。すぐに女の声がした。

「さあ駕籠をやるがよい」

駕籠がユラユラと動き出して、それを取り巻いた男女の者が長く往来へ影を曳いて、佐久間町三丁目の方角へ、シトシトシトシトと歩き出したのは、それからまもなくのことであって、そのために紋也は殺生沙汰から、あやうく救われることができたが、どうしたものか、にわかに「あッ」といった。駕籠の一団が三間足らずの先で、忽然とばかりに消えたからである。

駕籠の一団が紋也の眼の前の、三間足らずの先において、忽然とばかりに消えてしまったのは争われない事実ではあったけれど、さりとて地の中へ潜ったのでもなければ天へ上って行ったのでもなかった。一軒の家の中へはいったのである。

片側町の家並みが、月の光に染められもせずに、黒々と線を引いていたが、その一所に小さい門を持った、二階建ての家が立っていた。その造りは貧しげで、かつ小さくて狭そうであった。