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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
代官松の乾児たち
――今日の地理とはだいぶ違う。その区域に立っている大名屋敷といえば、酒井若狭守、松平左衛門尉、青山下野守、土井能登守、――といったような人々の屋敷屋敷で、その間に定火消しの番所もあれば、町家も無数に立っている。そこを行き過ぎれば代官町となる。――すなわち今日の連雀町の辺で、町家ばかりが並んでいる。
さて邸を出た小次郎であるが、たっぷりと月光につかりながら、代官町まで彷徨って来た。と、小広い露路があったが、そこから四人の人影が出た。
「おやきゃつは友吉ではないか」たしかに一人は友吉であった。
「おおそうそう、この露路の奥に代官松の住居があったはずだ。ははアそれでは友吉という男は、あの目明しの代官松の乾児の一人であったのか」小次郎には胸に落ちて来た。「代官松が我々一家を目の敵にしてずっと以前から付け狙っていると聞いていたが、さては友吉というあの乾児を、狡猾にも間者として入り込ませて、家の秘密を探らせたものとみえる」
それにしても四人も打ち揃ってどこへ何をしに行くのであろうか? ――これが小次郎の気にかかった。
「後をつけてようすを見てやろう」――で、小次郎は後をつけた。