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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

という意味を現わしたが、「私にとりましてはお粂という女は、山県兄弟と同じように、主義の敵でもありますれば、父以来の敵にもござります、いやいやそればかりではござりませぬ。お互い同士に敵でもあります。あの女はあの女と致しまして、この私に対しまして、敵対行動をとっております」

「女の身そらで大胆な奴だの」美作は意外に感じたらしい。「いつどのような手段をもって、あの女はそちに敵対したのか?」

興味深そうに美作は訊いた。と兵馬は苦々しそうに、左右の肩をそびやかしたが、

「ご前にはじめて本郷の通りで、お目通り致しましたあの夜のことで、お粂は手下の芸人ゴロを数人私にけしかけまして、討って取ろうといたしました」

「ははあそうか、あの夜であったか。……お粂の素性は何か?」

「さあ」といったが桃ノ井兵馬は、奇妙にもお粂の素性を、美作に語るのをはばかるようであった。

「ご前」と兵馬は笑い声でいった。

「あの女のことにつきましては、一切合財をこの私めに、おまかせくださるようお願い致したいもので」

「はてな」――とそれを訊くと北条美作は、解せないというように首を振ったが、「まかせるというのは何をまかせるのか?」