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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

魔窟の紋也

「よろしい飲もう、女の笑い声のために!」で、紋也は盃を干した。

すぐに徳利を取り上げると、手酌で盃へ酒をついだが、徳利を置くと盃を取った。

「さて、何かを祝おうではないか」で、四辺へ眼を配った。裸蝋燭が焔を上げて、卓袱台の一所に立っていた。

「よろしい飲もう、裸蝋燭のために!」で、紋也は盃を干した。

すぐに徳利を取り上げると、手酌で盃へ酒をついだが、徳利を置くと盃を取った。

「さて何かを祝おうではないか」で、四辺へ眼を配った。正面に外への出入り口があって、暖簾が夜風になびいていた。

「よろしい飲もう。暖簾のために」で、紋也は盃を干した。

すぐに徳利を取り上げると、手酌で盃へ酒をついだが、徳利を置くと盃を取った。

「さて何かを祝おうではないか」で、四辺へ眼を配った。暖簾をくぐって嫖客の群れが、二、三人土間にはいって来た。

「よろしい飲もう、お客さんたちのために」

で、紋也は盃を干した。すぐに徳利を取り上げると、手酌で盃へ酒をついだが、徳利を置くと盃を取った。

「さて何かを祝おうではないか」で四辺へ眼を配った。土間へはいって来た嫖客の群れが、賑やかに女たちに迎えられて、奥の部屋のほうへ通って行った。