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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
小次郎の生死?
それに紋也には心配があった。自分を討ち漏らした代官松の徒が、あくまで自分を討って取ろうとして、自分の屋敷へ討ち入りはしまいか? 討ち入られたが最後、妹も弟も、難を受けなければならないだろう。妹には吹き針の武芸がある。あるいは難をのがれるかもしれない。が、弟は柔弱者だ。討って取られてしまうだろう。
「小次郎! 小次郎! 小次郎!」と、思わず紋也は声を上げたが、その小次郎は紋也の行く手の、佐久間町の入り口の往来で、難を受けているはずである。
小次郎の生死?
一人の若衆武士が佐久間町のほうから、疾風のように走って来て、おりから佐久間町の入り口へまで来た、北条美作と桃ノ井兵馬とへ、――いや先に立っていた美作の胸へ、ドンとばかりにつきあたり、
「無礼者めが! 粗忽千万!」
「火急の場合、お許しのほどを」
「おっ、貴様は山県小次郎か!」
「どなたでござるな?」
「桃ノ井兵馬だ!」
「切れ!」という美作の声がしてつづいて兵馬が抜き討ちざまに、小次郎の胴へ切りつけたのは、水戸様石置き場の空屋敷にある笹家から火の手の上がった時で、小次郎の兄の山県紋也が受難の時刻と同じ時刻であった。