轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

小次郎は柔弱ではあったけれども、ともかくも兄に仕込まれて、多少とも武術の心得はあった。抜き討ちに兵馬に切り付けられたが、その一刀を胴へ受けて、そのまま斃れてしまうというほどにも、不鍛錬未熟の人間ではなかった。こういう場合に自然と出る「あッ」という驚きの声を上げたが、声を上げた時には小次郎は、反射的運動とでもいうべきであろうか、パッと背後へ両足で飛び、これとても反射的運動といえよう、左手で刀の鯉口を握り、右手で柄を握りしめ眼前に刀を上段にかぶり、刀身を月光にひらめかし、黒頭巾の中から白々と、左の一眼を繃帯した、白い布を気味悪くのぞかせて、開いている右眼で睨んでいる殺気に充ちた兵馬の姿を、絶体絶命の心持ちで怯えながらみつめていた。

両足で背後へ飛んだ時に、おのずからそうなった位置なのであろう、家々の屋根が月の光をさえぎり、そのためにできた蔭があって、往来の左側を暗めていたが、そこに小次郎は立っていた。で兵馬には小次郎の姿は暗さに包まれて不分明であったが、兵馬の姿は月の光に、青白く照らされて明らかであった。兵馬の姿が明らかに見える! ということが小次郎にとっては、即恐ろしいことであった。