轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
膝を崩してすわってさえいた。水戸様石置き場の空屋敷や、佐久間町の入り口で行なわれた、烈しい戦いに薄手ではあったが、幾箇所か傷を受けたからであった。崩している膝をおおうている、衣裳の裾をかかげたならば、傷を包んでいる白い布を、脛のあたりに見ることができよう。
左手を畳へささえるように突いて、右手をなるたけ動かさないように、膝の上へそっとのせていたが、その右の手のその腕あたりにも、繃帯は結ばれているのであった。島田髷も今は崩されていて、髪は無造作に束ねられていた。燈火を受けている右の頬の、耳の下辺に黒い痣が、大きくむごたらしくできていたが、棍棒などでうたれた痕であろう。
しかし負傷ということになれば、紋也のほうがいちじるしかった。燭台の燈火を横から受けて、しとねの上に仰臥して、その上へ絹夜具を引きかけて、咽喉と顔とを夜具の襟から出して、静まっている紋也から、夜具を取りのけて見たならば、手といわず足といわず胴といわず白布で一面にグルグルと、捲き立てられてあることに、驚かされるに相違ない。水戸様石置き場の空屋敷でこうむったところの傷なのである。
しかしいずれも致命傷ではなくて、ほんの浅い切り傷であり、骨にまで達しない打ち傷であった。