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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
四人の醜女
紋也の考えでは襖をあけて、部屋へ踏み込もうと思っていたのである。それが部屋へ踏み込まないばかりでなく、あべこべに背後へのけぞったのである。意外な光景を見たものと、こういわざるを得ないだろう。
しかし意外な光景は、その部屋ばかりにあるのではなくて、全然別の場所にもあった。女駕籠をにない小次郎を吊るした例の異形な行列が、入り込んだ二階屋がその場所であった。
被衣はかぶってはいなかったが、緑色の小袖を一様に着た、四人の老女が半円を作って、半円の切れ目へ燭台を置いて、その光で綴じ紙を眺めながら、顔を寄せ合ってささやき合っていた。
一方の仕切りは襖であったが、立てつけの悪い安物と見えて、襖と襖との合わさり目が、よく合わされずに隣りの部屋の、燈火も見えればささやく声なども、細かくこちらへ聞こえて来た。
と、一人の老女がいった。
「りっぱなお屋敷でございますな」――で、図面を指さした。片眼の上瞼がダラリと下がって、ほとんど瞳をおおうていて、隻眼のように見えている。それは醜い老女であった。「りっぱなお屋敷でございますわい」こう応じたのは鼻柱が曲がった――それは性的の悪い病い、中年のころに曲がったものらしい。