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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
三組の道中
で、二人は歩いて行った。
三組の道中
北条美作の心持ちが変わっておだやかな態度となって以来、桃ノ井兵馬は出入りを止められ、またも浪人の身の上となり、妻の君江にさえ逃げられて、江戸に住むことが苦痛となった。
矢柄源兵衛も同じであった。青地清左衛門を箱根の山中で討ち取ったあげくに巻き奉書を奪い、北条美作へもたらせるや、北条美作に愛せられ、美作から京都の所司代の、阿部伊予守へ懇望して、源兵衛を番士の籍から抜かせ、自分の家臣へ加えたが、美作の心が変わるとともに、源兵衛は冷遇されるようになった。
で、源兵衛は浪人した。
浪人はしたが食うことができない。
そこで食えない兵馬をかたらい、切り取りなどを行なったが、いよいよますます食えなくなった。
そこで二人はこう考えた。「京都へ行ってよい運をつかもう」――で、旅をして来たのであった。
しかるに掛川まで来た時であったが、意外な人間を発見した。旅よそおいをした一人の娘が、旅よそおいをした若い男を、供のようにして引き連れて、街道をたどって行くのである。二人ながら編がさをかぶっているので、顔を見る事はできなかったが、姿や物腰で知ることができた。