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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

「これはなんだ」

「暑気ばらいです、召上ってごらん下さい」

大助に勧められてひと口啜った。

「これは冷たくてうまいな」

「よろしかったら代えます」

うんと云いながら、あとをひと息に飲みほした宗兵衛は、洋杯を置いてすぐ話に戻った。

「いつぞや依頼してあった鉄と銅、あれを少し急いで集めて貰いたいのだ」

「だいたい大阪の倉にはいった時分だと思いますが、高松へ積み出してよろしいかどうか伺うつもりでおりました」

「高松へ送るのはよす、近日のうちに藩侯がお国入りだし、亀阜荘の模様がはっきりせぬからこちらでやる算段をつけた」

「鋳工所がございますか」

「尾州領の内にありそうだ、それについては若狭の仁で奔走して呉れている者がある、そこもとはまだ会ったことがないかな、梅田定明という人だが」

「若狭の人で梅田……」大助はすぐに思い当った、「源次郎と仰しゃる方ではございませんか、その方なれば高松へもいらしったことがある筈です、わたくしはまだお会い申しておりませんけれども」

「いま水戸へ行っておるが、戻ったら拙者がいっしょに尾張へ行く約束だ、なんといっても大切なのは鉄砲だから、そのとき馬を集める場所もきめて来るつもりだ」