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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

「夏はどこでもあついよ」

「なるほど」大助は大きく頷いた、「北風が吹くと寒いですからね」

「…………」

「実は校川さんが非常に事を急ぎだした」大助は坐り直して云った、「先日みえて木曽駒の買付けと、大阪の倉にはいっている銅鉄の積み出しを申付けられたんだ、幕府が水府老公の起用に傾いているのと、一般の情勢が滞頓しはじめたのに業をにやされたらしい」

「そんなことをずばずば大助に云ったのか」

「だってそれが、わたしの役だもの、但し校川さんには死んで貰いたくない、これは江戸藩邸の方々も同意だし、亀阜荘さまにもそう思召されることだと思う、そこでこんどの御帰国を幸い、校川さんに高松へいって貰うように手配をしたんだ」

秀之進は終った食膳を押しやり、黙って窓のほうへ眼をやった。

「たぶんそれはうまくゆくと思うが、問題はそのあとのことだ、実は校川さんが急ぐまでもなく、ことを決行しようという気運はだいぶ動きだしている、松崎さんの話によると高松のようすも僅かなあいだに変ったらしい、江戸藩邸でもかなり燃えたって来た、つまりじっとしていられなくなったんだ、校川さんは、『一拳を空に挙げる』