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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
自分で気づかないが、拡充された意力のたしかさが、かなりはっきりと身内に感じられる。……かれはいま唇許に微笑さえうかべながら、ゆっくりと五人のうしろへ近づいていった。
道の左を流れている上川が、諏訪の湖へはいる前に少し左へ曲ってゆく、その彎曲したところが草原になっていた。秀之進はそれを見当に足を早めていって、しずかに五人を追いぬいた。追いぬいて五つ足、くるっと向きなおって五人の前へ立ち塞がった。かれらはすぐにこちらを誰だか認めたらしい、あっといいながら左右へひらいた。
「貴公らがつけて来るのは知っていた」秀之進はしずかに云った、「なるべくならば双方に怪我のないよう、うまく別れる方法はないかと思案して来たが、どうやら抜き合せなくては始末がつかぬようだ、……そっちに文句があるか」
「それは、どういう意味かね」ひどく声のしゃがれた男が、右の端からそう反問した、髭の濃い眼のするどい男である、「われわれには貴公の云うことがさっぱりわからん、つけて来たとか、抜き合せるとか、いったいそれはなんのことかい」
「理由は滝川内膳が知っているだろう」五人はちょっと息をのんだ、秀之進はおっかぶせて云った、「結城寅寿も承知の筈だ、おれは事を好まないが、どちらかに決定しなければならぬときは仕方がない、小を捨てて大をとる、これでこっちの決意