轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
御迷惑を相かけるやもはかられません、彦根の事も一頓挫の折から、一日もはやくたち退きたいと存じます」
「それがよいかも知れぬ」左近はふかく頷いた、「そのほうはもう大海の潮の味を覚えて来た、高松の濠の水には棲みつけぬであろう、出てゆくがよい、京へのぼるなら徳大寺家へたよりをつけてとらせる」
「実はそれをお願い申したかったのでございます」
徳大寺大納言家は高松と姻親のかかわりにあり、これまで左近と堂上諸家とのあいだを、しばしば斡旋してきた。秀之進はまずそこから第一歩を踏みだそうと考えたのである。
「……申上げます」そのとき襖の向うで侍臣のこえが聞えた、「校川宗兵衛どの急のお目どおり願わしゅう伺候にございます」
「それはよい折だな」
宗兵衛と聞いた左近はすぐに此処へ案内してまいれと命じた。秀之進はさがろうとしたが、左近はゆるさなかった。
「出てゆけば再会はおぼつかぬかも知れまい、またとない折だ、会ってゆくがよい」
しいて拒む理由もないので、秀之進はおとなしく座を少しすべって待った。……伺候した宗兵衛は、まず上段に飾ってある楠氏の甲冑に拝礼をし、それから左近に挨拶をのべた。