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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

と抜からぬ顔をして冷ましていた。それでも西洋料理は別格通でなかったと見えて、一向通もいわずに塩の辛い不味い料理を奇麗に片附けた。ドダイ西洋料理を旨がる田舎漢では食物の咄は出来ないというのが緑雨の食通であったらしかった。

本所を引払って、高等学校の先きの庭の広いので有名な奥井という下宿屋の離れに転居した頃までは緑雨はマダ紳士の格式を落さないで相当な贅をいっていた。丁度上田万年博士が帰朝したてで、飛白の羽織に鳥打帽という書生風で度々遊びに来ていた。緑雨は相応に影では悪語をいっていたが、それでも新帰朝の秀才を竹馬の友としているのが万更悪い気持がしなかったと見えて、咄のついでに能く万年がこういったとか、あアいったとか噂をしていた。

壱岐殿坂の中途を左へ真砂町へ上るダラダラ坂を登り切った左側の路次裏の何とかいう下宿へ移ってから緑雨は俄に落魄れた。落魄れたといっては語弊があるが、それまでは緑雨は貧乏咄をしても黒斜子の羽織を着ていた。不味い下宿屋の飯を喰っていても牛肉屋の鍋を突つくような鄙しい所為は紳士の体面上すまじきもののような顔をしていた。が、壱岐殿坂時代となると飛白の羽織を着初して、牛肉屋の鍋でも下宿屋の飯よりは旨いなどと弱音を吹き初した。