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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

十 椿岳の畸行

小林城三となって後、金千両を水戸様へ献上して葵の時服を拝領してからの或時、この御紋服を着て馬上で町内へ乗込むと偶然町名主に邂逅した。その頃はマダ葵の御紋の御威光が素晴らしい時だったから、町名主は御紋服を見ると周章てて土下座をして恭やしく敬礼した。毎年の元旦に玄関で平突張らせられた忌々しさの腹慰せが漸とこさと出来て、溜飲が下ったようなイイ気持がしたと嬉しがった。表面は円転滑脱の八方美人らしく見えて、その実椿岳は容易に人に下るを好まない傲岸不屈の利かん坊であった。

十 椿岳の畸行

作さんの家内太夫入門・東京で初めてのピヤノ弾奏者・椿岳名誉の琵琶・山門生活とお堂守・浅草の畸人の一群・椿岳の着物・椿岳の住居・天狗部屋・女道楽・明治初年の廃頽的空気

負け嫌いの椿岳は若い時から誰でも呑んで掛って人を人臭いとも思わなかった。その頃横山町に家内太夫という清元のお師匠さんがあった。椿岳はこのお師匠さんに弟子入りして清元の稽古を初めたが、家族にも秘密ならお師匠さんにも淡島屋の主人であるのを秘して、手代か職人であるような顔をして作さんと称していた。それから暫らく経って椿岳の娘(寒月の姉)が同じお師匠さんに入門すると、或時家内太夫は「あなたのお店の作さんは大層出世をしたと見えてこの頃は馬に乗ってますネ、」