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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
五
とパルチザン然たる気焔を吐いてイイ気持になってるものもあった。
こういう危険な空気が一部に醸されてるのを知ってるのか知らないのか、大杉は一向平気で相変らず毎日乳母車を押していた。近所に住む大杉の或る友達がそれとなく警戒したが、迫害に馴れてる大杉は平気な顔をして笑っていたそうだ。ただ笑ってるばかりならイイが、「俺を捕まえようてには一師団の兵が要る」ナドト大言していた。大杉にはこういう児供げた見得を切って空言を吐く癖があったので、この見得を切るのが大杉を花やかな役者にもしたが、同時に奇禍を買う原因の一つともなった。
五
九月の十六日の朝九時頃、大杉は野枝さんと二人連れで、二人とも洋装で出掛けるのを家人は裏庭の垣根越しにチラと見た。直ぐ近くの聖書学院の西洋人だろうと思ってると、丁度遊びに来ていた魔子も後影を見ると周章てて垣根の外へ飛び出したが、すぐ戻って来て、「家のパパとママよ」といった。
その日の午後魔子は来て「パパとママは鶴見の叔父さん許へ行ったの。今夜はお泊りかも知れないのよ」といった。
それぎり大杉は姿を見せなかった。が、自分もその頃余り表へ出なかったから大杉を見掛けないでも格別気にも留めなかった。