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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
九 二葉亭の破壊力
恐らくこの歓喜を一人で味ってられないで、周章てて飛んで来たのであろう。
九 二葉亭の破壊力
二葉亭に親近した或る男はいった。「二葉亭は破壊者であって、人の思想や信仰を滅茶々々に破壊するが、破壊したばかりでこれに代るの何物をも与えてくれない」と。思想や信仰は自ら作るもので人から与えるべきものでないから、求めるものの方が間違ってるが、左に右く二葉亭は八門遁甲というような何処から切込んでも切崩す事の出来ない論陣を張って、時々奇兵を放っては対手を焦らしたり悩ましたりする擒縦殺活自在の思弁に頗る長じていた。
勿論、演壇または青天井の下で山犬のように吠立って憲政擁護を叫ぶ熱弁、若くは建板に水を流すようにあるいは油紙に火を点けたようにペラペラ喋べり立てる達弁ではなかったが、丁度甲州流の戦法のように隙間なく槍の穂尖を揃えてジリジリと平押しに押寄せるというような論鋒は頗る目鮮ましかった。加うるに肺腑を突き皮肉に入るの気鋒極めて鋭どく、一々の言葉に鉄槌のような力があって、触るる処の何物をも粉砕せずには置かなかった。二葉亭に接近してこの鋭どい万鈞の重さのある鉄槌に思想や信仰を粉砕されて、茫乎として行く処を喪ったものは決して一人や二人でなかったろう。