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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
祖父と父とは、遠くから冷やかに彼を眺めている、といったふうであった。祖母は馬鹿に彼にちやほやするかと思うと、すぐ突っけんどんになった。
こんなふうで、彼の実家はどんな角度から見ても、彼にとって愉快なものではなかった。で、彼がお浜に置き去りを食ったあと、沈默家になり、小食家になり、寝小便をもらすのは余儀ない次第であった。いわばそれは彼の自衛本能ともいうべきものだったのである。そして、この本能の命令に従うことは、いつも事柄を次郎の有利なように展開させたというのは、彼は結局家中の者にもてあまされて、再びお浜の手に引き渡されることになったからである。
次郎は最近二十日あまりも寝小便もたらさないで、お浜の許に落ちついていた。そしてそろそろ実家の記憶もうすらぎかけたところであった。ところが、今日はだしぬけに、お浜と一緒ですら嫌いな方角に、大して親しみもない直吉によって、運び去られようとするのである。これは次郎にとっては、全く思いがけない出来事であった。
直吉の肩の上で、彼の小さな胸はどきどきし出した。
「いやあよ、いやあよ、あっちだい。」
彼は、彼の両手で、直吉の顔をうしろの方にねじ向けようとした。