轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
九
「なに言つてるんだい、先生にそんなことができるもんか」
「できるかできないか、やつてみないうちはわからないわ」
「そんなこと本気で言つてるんじやないでしよう? わしはすぐ本気にするで」
「本気よ、もちろん……。市ノ瀬さんは、わたしが自暴自棄でそんなことを言うと思つておいでりやせん?」
「多少はね」
「それごらん、それが間違いよ。わたし、これからなにをするにしても、ちやんと最後の目的はあるのよ」
「ほゝう、すると、その目的を達するために手段をえらばないというわけ?」
「まあそうね?」
と、こゝで、北原ミユキは、ちよつと得意そうにまゆをひきあげ、
「でも、わたし、井出さんの奥さんが東京から帰つて来なさるまで、どうしてもこゝを動きたくないの」
九
井出夫人の名前がだしぬけにとび出したので、市ノ瀬牧人は、ちよつとどぎまぎして、
「あゝ、あのピヤノの奥さんか。ありやすばらしい奥さんだ」
と、簡単に片づけようとすると、
「ね、すばらしいでしよう。わたし、もう、あの奥さん、大好きで、大好きで……」
彼女が夢中になつてそう言うのを、市ノ瀬牧人は、いま/\しそうに、
「大好きなのは、先生だけじやないに。