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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
「新国民」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,801 字 · 86 页
――みんな同じ傷だ。
一刀致命の突である。
孫次郎と十郎兵衛が追いついて来た。二人ともすっかり顔色が変っていた……斜面に倒れていたのも名は覚えがないが、やはり江戸屋敷の家臣だと云う。
「傷はどこだ」
「ここをやられていた」
孫次郎は心臓の上を押えた。伊兵衛はそこにある二つの死体を見ろと云った。孫次郎はその顔をひと眼見るなり、絞るような呻き声をあげた……そしてやはり江戸表の藩士で、谷口平六と野島忠之丞という名をあげた。
三人は手分けをして、なお付近を探してみた。しかし雪に埋ったものか、それとも人数はそれだけだったのか、他にはなんの発見もなかった。探し疲れて権現堂の迂回路へ戻って来ると、孫次郎はもういちど二人の死体を検めて、
「おかしい、この突き傷にはなんだか覚えがある……みんな一刀ずつ、しかも的確に急所を覘った突は、凡手ではない」
「とにかくこうしていてもしようがない」
伊兵衛が云った。
「十郎兵衛、貴公行って目付役に届けて来てくれ。それから死体を運ぶ人手がいる。若い者を五六人と戸板を頼むぞ。ここはおれと斎藤が預るから」
「やれやれ、とんだ獲物になったぞ」
十郎兵衛はすぐに出掛けた。