轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
「新国民」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,801 字 · 86 页
「なんだ来ていたのか」
「来たさ、約束だもの」
「待っていたが見えないから、もう来ないものと思っていたよ。初めから聴いていたのか」
「火桶の側へ寄れというところから聴いた」
伊兵衛はちょっと皮肉に笑った。
「なにしろとまどいをしたよ。国老がいるかと思うと足軽がいる、おまけに女客まで同席ときた。講演者はまた気楽にしろの火桶を抱えろのと如才がない。大弐という先生がどれほどの学者か知らぬが人気とりにかけてはすばらしい気転だぞ」
「悪い癖だ。貴公はどうかするとひどく捻くれた見かたをする」
「そいつは言過ぎだぞ、捻くれた見かたというのは誹謗だ。拙者は真っ正直で口に飾がない。それだけのことだ。心はいつもさっぱりと割切れているんだ。さっきの講演にしても……大弐どのは立派な経綸を吐いているのだろう。なにも寒さに気を使って火桶の心配まですることはないはずだ」
「それが貴公の悪い癖だというのだ」
「またそいつか、癖だと云われてしまえばそれまでさ。しかし道之進」
伊兵衛は次に出る言葉が、どんな重大な意味をもつかということをまるで気付いてもいないふうに云った。
「あの大弐どのは殺されるぞ」