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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

……相手は転倒するなり、地上でくるりと身を転じたが、秀之進は踏みこんでその鼻先へ大剣をつきつけた。

「動くと斬るぞ」

相手は身を横たえ、片手を地についたままの姿勢で喘いでいた。

このあいだに少年たちが藤田家へ知らせたのであろう、あわただしい人声がしたと思うと、五六人の若侍たちがとびだして来て、ぐるりとまわりをとり巻いた。「どうしたんだ」「遺恨か、喧嘩か」口々に叫びだすのへ、秀之進は相手へ切尖をつけたまま答えた。

「闇討を仕掛けられたのです、御門前を騒がせて相済みませんが、お手出し御無用にねがいます」

「なに闇討だ、そいつか」若侍たちはのり出して来た、「おい提灯を持って来い」

「五つ六つ持って来い、われわれが検分してやろう、おいもっとみんなひらけ」

提灯を持ってまた二三人やって来た。その光りの動きに乗じて相手はいきなりもういちど、くるりと身を転がすと、すばやく半身を起こしざま右手を振った。道の上から掴みとった砂礫を即座の眼つぶしに使ったのだ。秀之進は予期したことのように身を跼め、さっと相手の腰へ打を入れた。

眼つぶしは秀之進の頭上を越して、とり巻いていた若侍たちの一人に当った。