轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
けれどもかの女自身にとってはその貼札の代償として生涯の生き方を決定されたのである。……名妓は男嫌いでなければならない、気位が高くなければならない、金ばなれのよいことは至上の条件である。適度の奇行、義理がたさ、食好み……なにもかも「かくかく有らねばならぬ」のであった。およねの梅八はそれをまもりとおしたのである。恋が無かった訳ではない。しかし芽も萠えぬうちに摘んで捨てた。自分のたつきの苦しいなかで人に貢いだ。竹亭寒笑などはその中のひとりで、殆んど梅八の庇護のもとに生きて来たようなものだったし、またかれのような存在は二人や三人ではない。
梅八は江戸文化の爛熟末期から衰退期にかけて、その文化がもっとも端的に集約される世界で生きてきた。現実を無視することを誇り、ものごとの正常さを蔑み、虚栄と衒気と詠嘆とを生命としてきた。はかなさ、脆さ、弱さ、そういうものにもっとも美を感じ、風流洒落のほかに生活はないと思ってきた。……そして、これらは自分から好んだものではなく、すべて環境の支配に従ったものだった。多くの妓たちの中には早く恋を得て尋常の道にはいった者もいる。むかしの仲間が背に子を負い、埃を浴びて現実のなかに生きる姿をみたとき梅八は「なんてみじめな」