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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
「攘夷の説が国論民心を統一する為の便法だという、それが事実かどうかうかがいたいと存じます」
「細説はあるが事実だ」
「すると夷狄撃攘の論は、そのままの意味では人を欺くものなのですね」
「ばかなことを云ってはいけない、人を欺くなどということは軽々しく口にすべきではない、国論民心の統一と攘夷の論とを区別して考えるから誤る、両者は一なんだ、今まじめに世界のありさまを観る者は、単純な攘夷などで国家の安全の保し難いことが瞭然だろう、日本人としては日本を主体として考え行うのが当然だけれど、世界の勢いはもうそれをそのままでは捨てて置かなくなっている、諄く云う必要はあるまい、日本はこれらと同等の位置に立つか、それとも征服されるか、この二つの内どれかを選ばなくてはならぬ時期に当面しているのだ、征服されるのを善しと思わぬかぎり、かれらと同等の位置に立ち、或いはかれらを凌ぐ存在にのしあがらなければならぬが、現在日本の文物をもってしては不可能というよりほかはない、数理化科学、機械工学、火術、船舶、これらのものは彼我のあいだに甚だしい懸隔がある、その差をある程度まで縮めないかぎり身動きはできない、本当に国を憂い国民の前途を念う者なら、この点のゆるがせならぬことはわかる筈だ」