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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

そしてやがて誰かが三味線をとり、誰かが唄いだす。俳諧よりもそのほうが目的と見える客の多くが、はじめて本領にかえったようすで、騒ぎだした時分、離室には大助と五人の武士とが、別になって飲んでいた。

五人の客は高松藩で、大河千吉郎、柳通助、松崎平馬、明石逸平、六角正之進という人々、このなかで松崎平馬は五日まえに高松から出府して来た者だった。

「それは本当か、新島が追っていったというのは」

「現にわたくしが会ったのですから」

大助は常陸の府中であった出来事を語った。かれらは松崎平馬から、早水秀之進の使命がどんなものか聞いたばかりなので、新島八十吉が追い討ちにやられたという話にひどく憤慨した。

「滝川の指図に違いない」

「たしかだ」

「しかし新島は十日ほど前に屋敷へ帰っている、おれは昨日も会ったぞ」

「ではとうとう追いつかなかったのですよ」

秀之進がうまくかれの眼を昏ましたときのことを思いだしながら大助はそう云って笑った。だれかが、「その新島という男は、いくらか剣をやるのかね」と訊いた。

「家中では指折りだ、実際はわからないが、然しおそらく早水は斬れまい」平馬はそう云った、「かれはふしぎな刀法をつかう、高松ではよく他国から来る者を相手にしたが、ひけをとったのをみたことがない」